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とは言っても、新刊の宣伝なのでしょうが、ためになります。
~記事転載~
転職活動で、もっとも不安なのが「面接」ではないだろうか。「今回はうまく答えられたし、コミュニケーションがとれたな」と手応えがあっても、なぜだか落ちたりする。もちろん理由は教えてもらえない……。経験を積んでうまくなるようなものではないが、何が悪かったのか、合点がいかないまま次のチャンスに向かうしかないから上達もしにくい。
そこで今回、『採用側の本音を知れば転職面接は9割成功する』の著者であり、キャリアアドバイザーとして活躍する小島美津子さんにお話をうかがった。
■面接対策は模範解答の暗記より、採用担当者の意図を理解すること
――今回の新著は「なぜ当社に応募したのですか?」から「このボールペンを10万円で買ってもらう方法がありますか?」まで、バリエーションに富んだ53個の質問例があり、その質問をする面接担当者の意図やねらいを解説する仕組みになっています。「意図やねらい」に着目した本づくりの理由はなんですか?
第一には、「なぜ面接担当者が、そんなことを聞くのかわからず苦労した」という出版社の担当者の体験談に触発されたことが理由です。面接対策として流布されている「こう聞かれたらこう答える」式のノウハウから脱皮して、転職希望者が自分なりに答えられる方法を伝えたいと思いました。
よく「面接質問への回答には正解がない」と言われますが、それは違います。このことは、ほかのキャリアカウンセラーの方もおっしゃっていますが、面接質問はすべて採用選考のためのもの。採用側が自社とのマッチングを問うために発しているものです。ですから、正解は「私はこの会社にマッチします」と伝えられる回答になります。でも、採用担当者が自分の何を気にしているのか……その質問の意図やねらいがわからないと、正しい答えを探すことができず、ピントの外れた応答をしてしまいがちです。
――出てくる質問はバリエーションに富んでおり、面接でどんな変化球を投げられても打ち返すことができそうです。こうした質問例が豊富に出てくる、先生のバックボーンを教えてください。
日本で転職が急速に一般化してきたのは1970年代で、75年には『明るい転職』という言葉が流行語になり、80年には『とらばーゆ』が創刊されて転職のイメージが変わりました。その頃から現在のリクルートという会社の外部協力者となって、複数の求人情報誌の編集企画や記事制作などに携わってきたのですが、当時から転職希望者である読者の悩みの上位を占めるのは「面接で何を聞かれるのか?」「どう答えればいいのか?」という内容でした。
まだ転職ノウハウというコンテンツも未確立な時代でしたが、編集部では素晴らしく優秀な方々が読者の声に応えて役立つ情報を届けようと模索していたし、採用現場という雄弁な情報源がありました。そして、転職者に向けた想定問答型の「こう聞かれたらこう答える」というノウハウのプロトタイプができあがった。下敷きには新規学卒者の就職活動マニュアルがあったように思います。記事は高いニーズがあったので反響も大きく、瞬く間に面接対策のスタンダードになりました。
けれど、転職は就職とは違います。求人企業の大多数は定期採用などしていない中小企業ですし、応募者は年齢も職歴も、積んできたキャリアの内容も千差万別です。巨大企業から中小中堅、個人事業所まで、また老舗企業からベンチャーまで、多様な業界の採用現場で担当者の生の声を聞き続けてきましたが、それぞれ応募者に求めるものも考え方も違います。だから、面接の質問の意図も、正しい答えも変わる。でも記事としてまとめるには、最大公約数としての想定問答例をつくるしかないというのも現実でした。
――モデル的な応答例だけでは不十分だったわけですね?
しばらくすると採用担当者から「似たようなことを言う応募者が増えた」という話を聞くようになりました。応答例を模範解答だと思って、丸暗記するような転職者が現れはじめたのです。丸暗記トークがミスアンサーにつながる危険も表面化してきた。そこで次のステップとして出て来たのが、ケース別の応答例です。職種やキャリアや応募先業界などの事例を設定し、同じ質問でも回答が異なることを見せました。これは、現在も面接対策の主流になっていると思います。
これらの経験を集大成したのが、既刊の『採用される転職者のための面接トーク術』という本です。求人企業をクライアントにもつ情報誌とは違い、書籍では解説も注意ポイントも転職者の立場で書けるのが嬉しかった。デザイナーに「これ以上、文字を増やすな」と言われるほどしつこく書き込みました。その分、懇切ていねいな本になったと自負していますし、役立つという評価もいただいています。
けれど、読者層によっては情報量が多すぎて「しつこい」そうです(笑)。質問の意図さえわかれば自分なりに対応できる、と。実際のところ、いくら本を分厚くしたところで、全ケースの応答例を網羅することは不可能です。質問の裏にある「採用側の本音」を知っていただき、自分なりの正しい答えを見つけてもらえばいいのだと考え、思い切って焦点を絞ることにしたわけです。シンプルな分、読みやすい本になりました。
■「ボールペンを10万円で買ってもらう方法は?」の意図は?
――いくつか紹介していただけますか? たとえば、「転職(退職)を決心したのはなぜですか?」はどうでしょう。前の会社で嫌なことがあった場合でも、前向きな理由を話すとよいのだと思いますが……。
会社や職場の問題点を退職の理由にすると、リスクが生じます。どの会社や職場でも似たような問題は起こる可能性がありますから。転職は、誰にとっても職業人生の重大事ですよね。だから、どの程度のことで転職の決断を下すかで、その人の職業観、業務や役割への参画意識や責任感、またトラブル耐性がわかります。そして目的のある転職なら、それを実現できる会社じゃないと定着してもらえません。
つまり、この質問の裏で採用担当者は「ささいなことで辞める人ではないか? 職場に何を期待しているのか?」という疑念を抱いているのです。ですから、応募先で実現できる将来の目標をクローズアップして話すことで、その疑念を払拭するのが正しい答えになります。
――「もし不採用だったら、どうしますか?」はどうでしょう。ほかの会社を探すしかないと思いますが、意地悪ですね。
これは「他社も受けていますか?」などと同じで、応募者が採用を辞退する可能性の有無や度合いを探っている質問です。大手企業や人気企業ではあまり聞かれません。というか、聞く必要がない。この質問の意図やねらいを実感しているのは、主に中小企業やベンチャーなどです。優秀な応募者なら、かけもち応募は当たり前。採用候補が2名いて、どちらかを選ばなくてはいけないときなどは本当に迷います。「ウチは第一志望か?」などと聞いても本音は探れませんから、意地悪な変形質問を繰り出すのです。
不採用だと言っているわけではないのに、「ご縁がなかったと思い、ほかの会社を探す」なんて言われれば、面接担当者は「そうですか…」とつぶやくしかない(笑)。この質問に、絶対に入社したいという気構えを示したり、粘り強く入社意欲を伝えてくるような応募者を選ばないと、面接担当者はほかの応募者に不採用通知を出せないでしょうね。
――「このボールペンを10万円で買ってもらう方法がありますか?」は、たまに話題になるオモシロ質問でしょうか? ちょっとからかわれてるのかな、なんて思ってしまいますが。
いろいろな面接担当者がいますから、確かに奇問珍問も登場してきます。でも、面接では限られた短い時間で応募者の評価判定を行わなくてはなりません。単に興味本位の無駄な質問などない、すべて選考項目に従った質問だと考えてください。
そう考えれば、この質問が「発想力や顧客対応力のある人か? 課題をクリアしようと努力する人か?」を見ているとわかるはずです。奇抜な回答を求められているわけではありません。回答に詰まっても「考えつきません」は極力避けなくてはいけません。得意先のクライアントに商品に付加価値をつけるアイデアを尋ねられている、ビジネスセンスを試されている、と思えば発想しやすくなるはずです。
■採用担当者も必死 不愉快な印象を受けても即断するな
――なるほど。すべての質問にはちゃんとした意図があるんですね。圧迫面接などもそうでしょうか?
社会的な批判もあり、最近は応募者を侮辱したり困らせるのが目的のホンモノの圧迫面接は滅りました。ただ、実際の面接では圧迫面接に似た状況になることがある。面接担当者が抱えている重責感や熱意に起因するケースも目立ちます。
もし採用ミスがあれば、業務上の重大な失態。ある巨大企業の話ですが、課長待遇で採用した人材が使えないという問題が起きたことがありました。解雇できないので、系列会社に出向させることに。その際、採用担当者は役員から「それを本人に納得させられなければ、きみが動くことになる」と言われたそうです。だから担当者も必死。採用ミスのないように厳正であろうと緊張しているのを、応募者に威圧的だと思われたりする例もあります。
もともと面接質問は、何らかの疑念、懸念を問うものが大半です。逆に言うと、気軽にスラスラ答えられる質問のほうが少ない。それなのに、笑顔でさり気なく聞いてくる面接担当者のほうが油断できませんね。厳しいことを言われたら何でも圧迫面接だと思ってしまうと、面接の応答だけでなく、会社選びも失敗する危険があります。
――面接担当者も緊張しているわけですね。でも面接で受けた印象は、会社選びにも影響すると思います。そうした失敗の具体的な事例はありますか。
こんな話があります。金融系のシステム開発エンジニア、太郎さんとしましょう。彼は異分野の仕事を目指してA社・B社の面接を受け、両社から内定を得ました。待遇条件に大差はないけれど、太郎さんは迷わずA社を選んだ。B社の面接で、不愉快な思いをしたからです。「◯◯技術の知識がない、□□の経験もない、勉強する気があるのか?」「それで△△の問題に対応できるのか?」などスキルや経験の不足を指摘されたり、意欲を疑うような追及質問もされ、内定が出たことすら意外だったと言います。
ところが、入社したA社で太郎さんは愕然。希望と違い、金融系の案件を扱うチームに配属されていたからです。聞けば、面接担当者は技術分野の差に理解が薄く、経験を生かせる配属なら本人も納得するだろう考えた、と。釈然としないまま、太郎さんは異動希望を出すしかありませんでした。
専門技術職の場合、面接担当者の技術知識の有無にも配慮が必要です。志望部署の役員などが出て来て、実務に沿った細かなことを掘り下げ、突っ込んでくるような面接であるほど“脈あり”と考えて間違いないと思います。太郎さんが受けたB社の面接担当者も、思い返せば希望部署の責任者だったそうです。
面接担当者が欠点・弱点を指摘する例は、合格線上ギリギリにある応募者を見込んで採用しようという際などにも見られます。指摘に対し、本人の口から自覚や覚悟があることを聞き、「採用して大丈夫だ」という確証を得たいのですね。その意味では、むしろフレンドリーに終始する面接は、不採用となる恐れも大です。落とす応募者に悪い印象を与えないようにしている会社が多いという事実も知っておくとよいでしょうね。
■すべての面接質問には意図とねらいがあることを忘れずに
――うまくコミュニケーションがとれたと感じるのは、こちら側の思い込みであるケースもあるのですね。最後に、現在転職活動中の方たちに面接質問への対応のコツについてアドバイスをお願いします。
中途採用は、非常に経営効率のよい人材確保の手法です。入社当日から重要なクライアントを任せたり、プロジェクトの中核を担うような即戦力の確保もできます。だから、その分だけ採用ミスは経営を揺るがす危険がある。賢く堅実な会社なら、いくらハイリターンでもハイリスクな投資はしませんよね。人材採用なら、なおさらです。
危ない会社は別ですが、きちんとした会社ほど、自社とのマッチングに不安を感じればリスク回避のために必ず説明を求め、質問が出てきます。ひとりの社員にかかる人件費の平均総額は、所定内給与の約1.7倍。雇うのがキャリアジンの読者層なら、年間1,000万円を超すでしょう。正規雇用なら、それが期限を定めずに続きます。面接担当者は、そういうビッグな労働契約の最終的な決断材料を、30分程度の短時間で手に入れようとしているわけです。そこを認識すること、すべての面接質問に選考上の意図とねらいがあることを、まず肝に銘じてください。それが面接質問に対応するための基本であり、コツでもあります。
選考評価の中身や判定方法は会社ごとに違いますが、評価分野は大きく見ると「人物評価」「業務関連の技能・経験・適性」「組織・就業条件への適応力」の3つ。つまり、冗談のような投げかけや差別助長に思えるような質問でも、この3つの評価分野のいずれかを判定する必要があって聞いているのです。問いかけられた言葉の裏に隠れている面接担当者の本音を汲んで、採用されるための正しい回答を見つけていただきたいと思います。
――ありがとうございました。
プロフィール
●小島美津子(こじま・みつこ)
キャリア・アドバイザー。
職業選びとキャリア形成、女性の社会進出などをテーマに媒体企画や取材執筆を続け、1985年に有限会社クリエイション ユウを設立・主宰。教育情報誌や求人情報誌での就職・転職・再就職にかかわる編集記事の企画制作、活動への指導・助言を経験。幅広い業界・職種の知識、通算1000社を超す採用現場や人事担当者の取材をベースにした現場感覚のあるアドバイスに定評がある。
主な著書に『採用される履歴書・職務経歴書はこう書く』『採用される転職者のための面接トーク術』(ともに日本実業出版社)ほか、最新刊に『採用側の本音を知れば転職面接は9割成功する』(中経出版)がある。
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